寝待の文箱

繭期な話とか、そうでない話とか。

TRUMP2015雑感(ソフィ、ウル)(再掲)


※今回のTRUMP以外はまだ見てません。キャラクターと関係性についての雑感。

※観劇回は、21日T、26日M、28日T、29日R。
 Wアンジェリコ様に正気を失って、大阪千秋楽にも行くことになりました。
※大阪千秋楽分追記と、加筆修正しました。(2015/12/16)

 

Tソフィは知的で大人びた風貌。教室の喧噪の中で一人、その周りだけ静かな美少年の優等生っていう第一印象。Tウルが近づいていきたくなる気持ちがよくわかる。自分の置かれた運命を受け入れつつも、他人からの侮辱には屈しない。まさに高潔。それでも、中身は普通の男の子って感じがまたいい。迷うこともあるし、友人との付き合いに悩んだりもする。かわいい。

Tウルは貴族のドラ息子って感じ。かわいい。ものすごくかわいい。守ってあげたい。Tソフィがすっきりとした美少年なのに対し、Tウルはお顔も髪型も上品な派手さがあって、2人のバランスがとてもいい。体格が良いところもかわいい。今はまだ未熟だけど、大人になったらさぞかし立派な風貌になるんだろうなと予感させる。最高。ほんと、貴族のドラ息子って雰囲気なのに、読書家なギャップはやばい。あなたそれ狙ってやってんの?天然なんだろうなあ、ずるい。派手で社交的な印象なのに、実はとても繊細なところがあるという性質は、やっぱり人を惹きつけるものだと思います。

TソフィとTウルは、本当に対照的で、二人が惹かれ合うのがとてもよくわかる。すごく理想的なうつくしい関係で、きっとこのまま誰にも邪魔されなかったら、いつかウルはソフィにダンピールであることを打ち明けて、自分の運命を受け入れて死んでいくことができたのではなかろうかと思ってしまう。結局は悲劇的な最期を迎えることになってしまうけど、ウルがあんなに自他の境界を乱すようなセリフを吐いているにも関わらず、この二人はお互いをお互いとして尊重しているように見えるんだよな。ウルはソフィになりたがったし、ソフィにウルであってほしがった、というのは、自分自身はソフィのように強く生きたいし、ソフィにはもっと弱さを見せてほしかったのだろう。Tソフィは弱さを感じさせないけれど、生い立ちをぽろっと話してしまったときのように、弱さがないわけではなく、自覚していないだけなんだろうと思う。ウルはもしかしたらそれに気がついていて、そういうソフィの弱いところを受け入れたかったのではないか、なんて言うのはちょっと妄想の域に入っている気もするけど、ウルがあんなに取り乱してソフィに酷いことをしてさえ、二人は健全な関係に見える。お互いがお互いをとても大切な友人だと思っている。ただただうつくしい純粋な友情。

私は、ソフィとウルの関係が、思春期に誰しもが欲する、お互いを唯一とする親友関係だと思っていて、その親友関係の成立にはお互いの秘密を打ち明けるという行為が重要な意味を持つと考えているのですが、Tの二人に関しては、最後の最後にその親友関係は成立したと思っています。そう思えるほど理想的な関係だった。TソフィはTウルの像を理想として、大切な友人としてずっと心のうちに抱えて生きていくんだろうなと思います。

Tが美しく理想的な関係であったのに対し、Rはもっと現実的な関係だと思います。
Rソフィは、凡人に見える。それが悪いと言いたいわけじゃなくて、凡人ぽいからこそすごく現実にいそうに見えるんだ。凡人だけど、少し浮いた存在で、少し厭世的で、少し気になる存在。その辺の教室にすごくいそう。そして、とても迷子な印象も強かった。自分の出自と将来に対してのぼんやりとした不安感に、明確に向き合うでもなく、迷いを迷いとして抱えている。それが、周りから少し浮いた印象を与えて、きっとそういうところにウルは惹かれた。

Rウルは、三枚目って感じの雰囲気を持っている。あんな美少年がああいうアプローチしてくると思ってなかったのですごく新鮮だったし、やっぱりこっちもすごい現実感ある。周囲が険悪なムードになると、おどけて見せて空気を変えようとする。きっと優しい子だからあんな風に振る舞うんでしょうね。そして、こちらも実は繊細というのがギャップとしてとても良い。Tとは違って、ダンピールを差別する周りの友人たちともうまくやれているのに、ソフィに惹かれていって、ソフィにだけは自分の繊細な部分を見せていく。Tウルにはソフィしかいなかったけれど、Rウルにはソフィ以外もいたのにソフィしか選ばなかった。ウルにとってのソフィという存在の特別さがより際立って見えた気がします。

Rのソフィとウルはどちらも迷いの中にいて、まさに思春期という感じがすごくする。理想的でうつくしくて舞台映えするのはTの二人だけど、Rの二人は本当に少年らしい少年で、どちらもとても好き。
Rの二人は現実感があるゆえに、お互いに対する執着がTよりももっとあるように見えた。Tのように対称的で凸凹がぴったりはまるような二人ではなく、曖昧な不安を抱えた者同士、それこそ一体化してしまいたいような気持ちを抱いていたのではなかろうかと。Tの「生まれ変わりたい」は文字通りだけれど、Rは、本当は魂が混ざり合えたらいいと思っているけどそれができないから生まれ変わりたいのだと言っているように聞こえた。だから、最後のRソフィは、ウルの魂を半分抱えているように見えたんだな。思春期の恋とも友情ともつかない未分化な愛情が、まだ全然整理できていないままそこにあって、でもそれはとても深いもので、だからそれを無理やり断絶させられて生きていくのはとてもつらいことだと思えた。ウルが死んだとき、ソフィの半身も一緒に持っていかれたし、それを埋めるためにソフィはウルの魂を半分抱えていった。そんな風に思わせる、情念的なソフィとウルでした。
もっと時間があったなら、もっといろいろぶつかり合ったりしながら、それぞれ自我を確立して、思春期を抜けていって、良い親友関係を築けたのかなあと思います。まあ、繭期は越えられなかったのだろうけど……。

高杉真宙くんと早乙女友貴くんには本当に美しいものを見せてもらえて感謝してます。ほんとにすごい良かった。この二人のソフィとウルを見られて良かった。おばちゃんにこんなきれいなものを見せてくれてありがとうね……という気持ち。今後も健やかに育っていってほしいなあと思いました。

大阪千秋楽追記
東京ではあまり意識してなくて気づかなかったんだけど、最初の地下書庫のシーン、ものすごくきれいですね。
ソフィがウルに、養護院の話をする。今まで誰にも話さなかった自分の生い立ちを開示する。
それに対し、ウルはTRUMPの話をする。秘密にすることを強いられている自分の生い立ちを開示しようとする。死への恐怖の共有を求める。
アンジェリコたちが乱入してくる前の最後のセリフで、ウルが、おれは、おれは、って言うのに続く言葉は、「ダンピールなんだ」だったんですね。結局消え入るような声で、あいつらとは違う、という表現に逃げてしまったけれど。
大阪楽のあのセリフは本当に痛々しくてつらかった。本当は打ち明けてしまいたかったんだね。
きっと、ソフィが死への恐怖をひとかけらでも見せていたら、あの地下書庫で、ソフィだけに打ち明けられたのだろうと思います。その後も、ダンピールであることが晒された後も、ずっとウルはソフィに死への恐怖を分かち合うことを求めていた。
でも、ソフィにとってまだ死は差し迫った問題ではなかったんだ。もともとあまり多くのものを持っていなくて、抱えようともしていなくて、あんなに明白に友人であるウルのことすら友達じゃないと言えてしまうほど、自分の大事なものに無自覚なソフィが、死による喪失に恐怖を抱くにはまだ時間が必要だった。
ラファエロとアンジェリコが引き金を引かなければ、まだ二人には時間があったはずで、時間があればきっとあの地下書庫で二人だけで秘密を共有できていただろうと思う。時間だけが足りなかった。
それでも、最後の最後にソフィはウルの死に恐怖した。だからウルの気持ちは報われたのだと思いたい。
うつくしい二人だった。

(初出:Privater 2015/12/04)